ドイツのハンブルグから美しいデザインと、機能性に優れたユーロラックモジュラー製品を発売している"Robaux"は、近年モジュラーシンセサイザーの界隈で注目されているブランドです。
中でも "3PT"は、モジュラーシンセサイザーの演奏に欠かせない7つの機能を1台に集約しています。通常であればいくつかのモジュールを配置し合計すると結構なスペースになりますが、3PTはたったの"10HP"の省スペースサイズで7つの機能を実行でき、さらにモード毎に3系統のCV出力を設定可能です!
またRobauxならではの、シンプルながら美しいパネルデザインは、演奏するモチベーションを高めてくれます。流れるような光の軌道を描くLEDによってCVの状態を視認することができるプロフェッショナルな実用性と、ステージで最も美しく映える流線形にデザイン性を両立。プロダクトとしての完全なかたちにこだわっています。
ここでは Robaux 3PTの優れた7つの機能(モード)について、モード毎に詳しく解説いたします。
★モードの切り替え方法と接続端子
7種類のモードを切り替えるには、右上のボタンを押すだけです。モードは円形にデザインされた光のラインの組み合わせで表現されます。モード毎に発光のコンビネーションが変わるため、最初は覚えるのに少し時間がかかりますが、慣れればすぐに使いこなせるはずです。右上のボタンを押す度にモードがトグルで切り替わります。
3PTのコネクションについてはとてもシンプルです。まず入力は1つだけで、ここにはクロック/トリガー、またはクオンタイズモードなどではソースとなるCV信号が入力されます。
出力は3系統あり、モードによって様々ですが、基本的に3系統の異なるセッティングのCVを出力して、他のモジュラーにフィードすることができます。
1. Tripotモード
3PTのTripotモードは、大きな1つのノブをグイグイ回して、最大3系統のCVを制御することができます。もちろんノブの動きは入力にエンベロープやトリガーなどのCVから自動制御することも可能です。 例えばライブでモジュールの3つのパラメーターに対して、3つ同時に、さらに手動、または外部CVから動きを与えたい場合に、スムースなパフォーマンスをすることができます。それぞれのチャンネルごとにノブの動きに対して、出力されるCVがどのように動くかを細かく設定できます。0V→5V、5V→0V、オフセット値をノブで調整できるので、CVの方向性、範囲などを細かく追い込めます。
2. LFOモード
LFOモードは、サイン→トライアングル→ノコギリ→スクエアと波形をシームレスに変化できる"3系統"のLFO発生器として機能します。大きいノブでLFOスピードを調整でき、外部CVからのコントロールも可能です。さらに上段のノブは周波数のマルチプライヤーとして利用できます。 スルーリミッター(一番下のノブ)も搭載されているため、選択されたLFO波形のエッジを滑らかにして、例えばそのCV信号を外部オシレータのピッチモジュレートに使用する場合には、グライド(ポルタメント)効果を得ることができたりして便利なCVになります。
3. Chord Progression モード
コードプログレッション・モードでは、チューニングされたオシレーターに対して3声の和音を提供するためのCVを生成できます。ルートキーC~Bを上段の左側のノブで、中央のノブでメジャー/マイナーを、左側のノブでコードのバリエーションを変更できます。中段と下段のノブで構成コードのオフセットやクオンタイズについて更に調整できるため、モジュラー演奏の中で即興的なコードバリエーションを展開するのに適しています。大きいノブで1V/Octを変更できますが、CN入力端子に接続した演奏に同期したCV信号からコントロールしてあげるのが良いでしょう。
4. Quntizer モード
クオンタイザー・モードは、LFOやランダムなCVを、音楽的なスケールに変換する場合に利用できます。入力されるシグナルやノートはノブの組み合わせによって25の異なるスケールに自動クオンタイズされます。例えば周期的なLFO信号を、一般的なVCO(オシレータ)モジュールのピッチ(V/OCT)入力にパッチした場合、そのピッチ変化は滑らかなピッチ可変となりますが、クオンタイザーによって、音楽的な位置に配置されたステップ状の音階に変換できます。または完全にランダムな音階を、音楽的な意味のあるスケール上に強制的にシフトできます。 3PTのQuantizerモードでは、出力1と2が通常のクオンタイズ済のCVの出力で、出力3はトリマーを最大位置にするとゲート信号が得られます。ゲートはクオンタイズされたノートが異なるノートに移動した際に出現します。オシレーターからのステップノートの音を区切って出力したい場合などに使用すると便利です。
5. Random Generator モード
ランダム・モードは、3PTを完全なランダム・ジェネレータとして使用できる機能を備えています。 ランダムに発生するノートの最小値と最大値を各3出力ごとに設定でき、更にスケールの設定(リニア、コード、メジャー、マイナー)の設定も可能です。モジュラーならではの予期せぬランダムノート演奏に欠かせない機能です。
6. Sequencer モード
モジュラー演奏に欠かせないCVステップ・シーケンサーも搭載しています。シーケンス・モードは、3PTをシンプルな8ステップのCVシーケンサーとして利用できるモードです。入力にクロックまたはトリガーを接続するだけでシーケンスが動き出します。8つのノブでCV値を設定して、中央のノブでステップ数(1-8)をセットできます。 また、ステップ数を減らしていくとCH3は異なるシーケンスを発生させるためバリエーションを得ることができます
7. Euclidean Rhythm モード
モジュラーシンセでリズムを構築する際によく利用されるのが「ユークリッド関数を用いたリズム」です。ユークリッド・モードでは、全体のステップ数を決めたうえで、その中に何発のパルスを均等配置するかを設定し、その組み合わせでリズムを構成できます。さらに各3つのトリガー出力にはオフセット値を設定できるため、とても複雑で有機的なリズムを構成することができます。 古代ギリシャの数学者"ユークリッド"が提唱した「2つの自然数の最大公約数を求める」アルゴリズムを利用し、それをリズムに応用したものがユークリッドリズムです。2000年代にはユークリッドアルゴリズムから、世界中に伝わるトラディショナルな音楽のリズムのほとんどが生成できるという論文が発表され話題になりました。 均等なビートが有機的に絡み合いランダムに長短の中で繰り返されることで、魅惑的なリズムを構成できることは、多くを即興性に求められるモジュラー演奏にぴったりです。 3PTのユークリッドモードは全体のステップ数やオフセットを調整でき、さらに3つのトリガーアウトを備えているので、ユークリッドリズムを高い次元で簡単に実現できます。
まとめ
このようにRobaux 3PTは、モジュラー演奏にとても便利な定番のツールを、10HPの省スペースサイズに7タイプも含めており、モード毎に3系統のCV出力が可能という、とても役に立つモジュールです。楽曲にあわせてモードが切り替えられることは、単純なHPの節約にもなるだけでなく、様々なモードを試しスタイルを拡げることにもつながります。 またCVの状態が常に美しいディスプレイ上に動きとなって視認できることは、演奏時の確認にも便利ですし、見栄えもします! 絶対にあると便利で、絶対にあるとかっこいい Robaux 3PTをぜひお試しください! 見た目だけでなく、機能も超プロフェッショナルで精巧です!
※イラスト:ゆるてが