Gates, Pulses, Clocks, and Square LFOs
Eurorackモジュール間の信号は電圧であり、通常は-12V〜 + 12Vです。サンプル再生のトリガーなどのイベントを制御するには、正の電圧にジャンプしてからゼロに戻る信号を使用すると便利です。これらはMIDIノートオン/ノートオフメッセージと比較できます。リーディングエッジと呼ばれる正の電圧へのジャンプによりサンプルの再生を開始し、電圧の急速なフォールバックは、サンプルに停止を指示するような使用方法があります。このような信号は、その使用方法と信号の特定のクオリティに応じて、ゲート、パルス、クロック、またはスクエアLFOなどさまざまな呼ばれ方をします。電圧のより安定した変化はゲートと呼ばれることが多く、急速で短い変化は通常パルスと呼ばれます。一定の間隔で繰り返されるパルスまたはゲートは、クロックまたはLFOと呼ばれたりもします。パルスが可聴範囲に達するほど速く繰り返される場合、その信号はオシレーターと呼ばれることがあります。これらの信号はすべてほぼ同じように見え、イベントのトリガー、エフェクトの変調、その他の機能の実行などに利用されます。
Pulse Skipping
「パルススキッパー」は、つまりはゲート信号をゲートすることです。 これは新しいパルスを検出するたびにVCAを開くか、または閉じるかを選択するように機能します。Missed Opportunities(逃した機会)とは、パルスをスキップしてリダイレクトすることです。 モジュールは、入力チャンネルの1つで立ち上がりエッジを検出すると、そのチャンネルで入力を通過させるか、遮断するかをある程度の「確率」で決定します。 Missed Opsが信号を通過させないことを決定した場合、次のパルスの立ち上がりエッジを検出するまで何も起こりません。 これらの決定は各チャンネルで独立して実行が可能なため、あるチャンネルが入力をブロックしている間に、別のチャンネルは入力を正常に通過させているような興味深い効果を作り出します。
Normaling and the Missed/Match Switch
チャンネルごとの確率を設定するノブを提供するのではなく、チャンネルをチェーンして追加の確率を実現できるのが本機の大きな特徴です。同じクロックまたはパルスソースを4つのチャンネルすべてに供給すれば、異なりつつも関連した4系統の出力を得ることができ、レイヤードサウンドに特に適しています。さらに、「Density」というラベルの付いたCV入力により、4つのチャンネルすべての確率と、ランダムジェネレーターのレートを同時に調整できます。
Density端子に入力が何もない場合は、モジュールの背面にあるトリムポットで設定された値がデフォルトのDensity値になります。最大位置で100%(トリガーは100%出力)、最小位置で0%(トリガーは出力されない)です。Density端子に0V〜5VのCV電圧を接続すればデフォルトのDensity値は自動的に上書きされます。 例えば、Make Noise Mathsのチャンネル2と3、またはIntellijel Triattなどの出力は、このアプリケーションに最適です。
トグルスイッチが"Match"に設定されている場合、ノーマライズは、前のチャンネルの出力と一致する標準の仕様です。したがって、チャンネル2の入力はチャンネル1の出力から供給され、チャンネル3の入力はチャンネル2の出力から供給されます。これは、常に完全に同期しているが、レイヤーがランダム化されているレイヤードサウンドの作成に最適です。
トグルが"Missed"に設定されている場合、ノーマライズは「前のチャンネルによって"スキップ"されたパルス」を送信します。
このモードでは、各チャンネルは"ベルヌーイゲート"として動作し、2番目のゲート出力は次のチャンネル入力にノーマライズされます。したがって、チャンネル2には、チャンネル1がスキップしたパルスが供給され、チャンネル1がパルスを送信しても入力は受信されません。
これは、トリガーがない場合にON信号を保持するだけでなく、入力パルスに基づいてパルスを出力するため、ロジックORとは異なります。 その結果、4つの出力がオーバーラップすることが無いので、単一のクロックやパルスソースから、複雑なクモの巣状のサウンドを作成するのに最適です。
ライブ演奏中にこのスイッチを切り替えるだけで、様々なバリエーションが生まれます。
モードの切り替えだけでトラックのさまざまなセクションをクリエイトできるほど、その違いははっきりと感じられます。
重要な注意点として、パッチケーブルが4つの入力ジャックすべてに接続されている場合は、ノーマライズ入力を受信するチャンネルがないため、Missed/Matchモードスイッチの効果はありません!(スイッチを切り替えても何も変化しません)。
Random Seed and “Reset” Input
ほとんどのデジタルのランダムソースと同様に、Missed Opsは実際には疑似ランダムです。起動時に周囲ノイズからシードを生成し、そのシードはモジュールの電源がオフになるまで使用されます。 この制限を隠そうとするのではなく、音楽的な結果を得たいと考えました。 これがリセット入力の原点であり、パルスを受信するとランダムシーケンスの先頭に戻ります。 これにより、MissedOpsを一種のシーケンサーとして機能させることができます。 リセット入力にトリガーを繰り返し送信すると、リセットするたびに同じパターンのスキップが聞こえます。 モジュールの出力の1つをこの入力にセルフパッチすることは、半予測可能な短くリズミカルなシーケンスを作成する場合に特に効果的です。
モジュールは周囲のノイズからランダムなシーケンスを生成します。つまりモジュールが起動するたびにシードが異なルことで、予測可能性とランダム性の非常に興味深いコンビネーションが得られるようデザインされているのです! 本当に驚くべきランダムパターンに出くわした場合は、リセット入力を使用してもう一度聞くことができます。 ただし、システムの電源を切ると、そのランダムなパターンが二度と得られなくなるため、必ず録音しておくことをお勧めします。
リセット入力がハイに保持されている限り、ランダムシーケンスは初期値のままになります。したがって、高速パルスはほぼ瞬時にシーケンスをリセットし、長いゲートはリセット前に現在のゲート状態を保持します。つまりリセット入力に定電圧を送ることにより、各チャンネルを固定状態に保つことができることを意味します。 特定のチャンネルを開くか閉じるかは、Densityの値によって異なります。
Density値は、リセット値がハイに保持されている間も変更できます。 Densityが変更されると、各チャンネルはランダムシーケンスの初期値に応じて開閉します
Patch Ideas: Drums
Missed Opsは、4つのチャンネルを装備しているためビートメイキングに特に適しています。 たとえば、クロックデバイダーの4つの出力によってトリガーされる4つのドラムサウンドの単純なビートを考えてみましょう。 ディバイダーとドラムの間にMissedOpsを追加するだけで、ロボットのように硬いビートが、シフトして生きているように感じるものに変わります。 このタイプのパッチでは、Missed Opsをかなり高Densityに設定することをお勧めします。そうしないと、スキップされるヒット数が多すぎてドラムパターンを識別しにくくなります。もちろんそれが目標であればこれは面白いビートになります。 また、低速のLFOでDensity入力をモジュレートすると、予測可能性の限界に達するビートが作成されます。
同様に、Missed Opsに安定したクロックをパッチすると、一連のランダム出力が発生しますが、それはビートに上手く収まっています。 これは、より大きなパターン内で特定のドラムサウンドをトリガーするのに最適です。 たとえば、高速ハイハットにバリエーションを追加したり、タムフィルを混ぜたりするような場合です。もちろん、すべての入力にパッチされたクロックを使用して、4つの独立したランダムトリガーソースを作成することも可能です。遅いテンポでの物憂げなサウンドスケープ、または速いテンポでの狂った暴走カオスサウンドにも対応できます。
Patch Ideas: Fluctuating Layers
キーボードやシーケンサーとエンベロープジェネレーターの間にパッチを適用すると、MissedOpsは演奏するノートの一部をスキップすることを決定します。マルチティンバーパッチと組み合わせた場合に、音色の1系統だけにMissedOpsを使用すると、そのレイヤーがアクティブになるのはたまにしかありません。これは予想もつかない場所に着地するための、即興的なサウンドスケープやソングライティングに最適です。
同様のアイデアは、MissedOpsを使用してVCAを制御することです。 VCAにオフセット/ゲインがない場合、Missed Opsでつっかえたような(Stuttering)サウンドの信号パスを、ランダムにミュートさせてみましょう。 または、VCAにオフセットを追加して、MissedOpsが代わりにボリュームのバリエーションを追加することもできます。 よりスムーズなバリエーションが必要な場合は、Missed Opsの出力にスルーリミッターまたはエンベロープジェネレーターを追加して、VCAが状態を切り替えるときのクリックを回避して滑らかにトランジションさせるのも良いでしょう。
Patch Ideas: Random Modulation Source
Missed Opsの隠れたボーナスは、あなたのシステムにスルーリミッターがある場合に、ランダムトリガーだけでなく、ランダムモジュレーションのソースとしても機能できることです。 ランダムジェネレーターとスルーリミッターを使用して、ランダムな「LFO」を生成できます。 または、クロックを使用して、ビートに追従するセミランダムLFOを作成できます。 複数の出力を持つスムーズなランダムソースの場合、Missed Opsの2つの出力を2つの別々のスルーリミッターにフィードし、それらを使用して相互にモジュレートさせてみましょう。 Make Noise社のMathsのようなスロープジェネレーターは、調整可能なスルーリミッターとして利用できるため、今回説明したパッチに役に立ちます。
Design Philosophy
Missed Opsにノブがないのは、制約とパッチングによる音楽制作の両方に対する愛情から来ています。
インスピレーションになった一つは初期のモジュラーにおけるシーケンサーでした。これらはコンピューターとグルーブボックスの能力に制限があるにも関わらず、現在も多くのシステムで場所を見つけています。ある特定のシーケンサーモジュールは、ユーザーにチャンネル1とチャンネル2のどちらでトリガーを送信するかを選択するように強制しますが、両方にオプションはありません。
このシーケンサーを使用して、ドラムマシンのように単にレイヤー化するのではなく、サウンド間でバウンドするビートを作成することがよくありました。 もちろん、論理XORゲートを使用して、常に両方を同時にトリガーすることもできますが、シーケンサーに決定を任せたほうがよい場合もあります。 実際、私はその決定を強いられる事が面白いと感じたのです。
Missed Opsを設計するときに、すべてのチャンネルの全体的な確率を制御するために1つの入力のみを追加することにしました。 これにより、単一のコントロール入力でモジュール全体の全体的な特性を制御することが可能になります。
また、チャンネル間のノーマライズを採用することで、追加の確率を取得できます。
これにより、楽しく自発的な音楽制作のための制御と制約の適切なバランスが得られることを願っています。
Front Panel
・Gate Input 1~4
左の列がゲート/パルス信号の入力端子(チャンネル1~4)です。
入力信号は「確率ゲートスキッパー」に送られます。
1V以下の信号はゲートOFF、それ以上で10Vまでの信号はONとしてカウントされます。
Gate Inputのチャンネル1(一番上の端子)だけは特別で、ここに接続がない場合、信号は「ランダムパルスジェネレーター」に送られます(接続があれば「確率ゲートスキッパー」に送られる)。
チャンネル2のGate Inputに入力された信号は、2つめの「確率ゲートスキッパー」に送られます。
チャンネル2のGate Inputに何も接続がない場合には、チャンネル1からの信号がフィードされます。
挙動についてはmiss/matchスイッチで決定されます。
チャンネル3と4も同様です。
各Gate Inputの右横にあるLEDは入力シグナルが1V以上の時に青色に点灯します。
・Output 1~4
右側の列が出力端子(チャンネル1~4です)。
確率によるゲートスキッパーが決定した結果の信号を出力します(5Vハイゲート信号)。
各Gate Outputの左横にあるLEDは出力がHigh(>1V)で緑色に点灯します。
・Miss/Matchトグルスイッチ
チャンネル間のノーマライズの挙動を変更します。
Matchに設定されている場合、各チャンネルには前のチャンネルの信号がフィードされます(ただしチャンネル1についてはランダムパルスジェネレーターと接続されています)。
Missに設定されている場合は、各チャンネルは前のチャンネルが「スキップした」信号を受信します。
*Miss/Matchトグルスイッチは全てのGate Input(1-4)にケーブルが接続されている場合には機能しないことに注意してください。
・Rest Input
リセット入力にHigh信号(>5V)がある場合は全てのチャンネルの現在のステートを保持します。入力信号がLowになるとランダムシードは再びリセットされます。
Rest Inputの右横にある黄色いLEDは入力信号が>1Vになると黄色く点灯します。
・Density Input
全てのチャンネルの確立を同時にコントロールします。
またチャンネル1に接続されているランダムパルスジェネレーターの速さをセットする事もできます。
0V-5VのCVに対応します。
Density入力の右横にある黄色いLEDは現在のDensityの値を表します。
Density入力に接続がない場合には、背面基板上のトリムポットの設定値が表示されます
・Reseedボタン(追加)
黒いスイッチはReseedボタンです。このボタンは内部の乱数発生器(Random Number Generator)を 「再シード 」するためにあります。
ほとんどの状況ではReseedボタンを押しても違いを聞くことはできませんが、Missed OppsがReset入力経由でパターンを作成するために使用されている場合にはとても役に立ちます。出力の1つ(または外部トリガー)をReset入力にパッチングするとパターンを作成することができるようになります。この 「パターン 」は実際には乱数ジェネレーターの最初の数ステートであるため、Reseed ボタンが押されると、新しい 「乱数シード 」が生成され、新しいパターンとして聞こえます。
Back Panel
・トリムポット
基板上のトリムポットを回すと、Density端子に信号がない場合の、デフォルトのDensity値を設定できます。右側に回し切りの最大値では入力されるゲート/パルスに対して100%確率の出力となり、左に回し切った最小値では入力されるゲート/パルスに対して0%の確率となり信号は出力されません。トリムポットで設定したデフォルトのDensity値は、Density端子に信号が発生している場合には上書きされ、Density端子に存在する0-5Vの電圧値が優先されます。5Vを与えれば100%、0Vで0%の確率で出力されます。